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世界はあなたのコレクション

出掛けた場所で見たこと・読んだもの・考えたことを、いつか誰かと共有するために。

家のない人と猫、星の付く名前

(前回のつづき)

8月6日はとても暑い日でした。

けれどぼくが本を読んでいた休憩所には屋根があり、屋根は日射しを遮っていました。そして壁はないので時折り風が吹き抜けてゆきます。ページが捲られるのを防ぐために常に片手で本を押さえていなければなりませんでしたが、でも休憩所に群がってくる熱気を箒で埃でも掃くみたいに吹き払ってくれる風には、煩わしさよりも感謝の気持ちの方が強いのでした。

つまりぼくは日陰の風の通り道で暑さに集中力を殺がれることもなく読書をしていたのです。

16時に園内放送があり、それを機にぼくは席を立ちました。新宿御苑は16時半が閉園時間ですので、まあちょうどいい時刻と言えます。

外に出て駅へ向かって歩いていると、工事現場の脇で男の人が寝ていました。そして彼と並んで猫がやはり寝ていました。彼らは友達なんだろうか、と考えて、そうだったらいいなと思いました。いやそうでなければならないと。

 

これで8月6日の新宿御苑の話はおしまいです。

ですが最後の最後に、「家の外で本を読むこと」について思うところをちょっとだけ書いておきます。

ぼくは基本的に本は家で読みます。外で読むのは本を読んでいるというパフォーマンスをしている気分になるから読書に集中できないのです。

大学1年生のとき(18‐19歳のとき)こんなことがありました。

当時ぼくは『バイロン詩集』という黒い箱に入ったいかにも立派そうに見える本を読んでいて、それを大学にも持参して授業前に読んでいました。

同じ教室にとても可愛い子がいました。彼女は星の付く名前の持ち主でした。

ぼくはどうにも彼女のことが気になってしまって、詩集を読んでいてもバイロンが何を書いているのかさっぱり頭に入ってきませんでした。だから今でもぼくは『マンフレッド』がどういう作品なのかをうまく説明することができません。

外で本を読むには、ぼくは些か自意識過剰で気が散りやすい性質のようなのです。そんなわけで、これまで家の外で本を読むことをなるべく避けてきました。

だから新宿御苑で本を読むという行為は、ぼくの人生にとって例外的な出来事なのです。

 

ではまた近いうちに。